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不動産売却の注意点は何がある?初めての手続きで知っておきたいこと

不動産売却について

藏屋  和人

筆者 藏屋  和人

不動産キャリア27年

株式会社暮らしエステート  代表取締役。宅地建物取引士。金沢市内の不動産会社で22年勤務の後、株式会社暮らしエステート設立。住宅用土地販売、空家相談などを中心に様々な不動産に関する取引をおこなっています。

不動産の売却を検討し始めると、「何から始めたら良いのか」「どんな注意点があるのか」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。初めての経験だからこそ、つまずきやすい落とし穴や後悔につながる失敗を防ぎたいものです。この記事では、不動産売却を進める際に知っておきたい重要な注意点を、実際の流れに沿って分かりやすく解説します。安心して売却活動ができるよう、一つひとつ確認しましょう。

スケジュールに余裕を持って準備する重要性

不動産売却を初めて検討される方にとっては、手続きや準備に思ったより時間がかかることがあります。売却の全体的な流れをみると、まず査定や媒介契約から売却活動、売買契約、引き渡しに至るまで、一般的には3~6か月ほどかかります。さらに都心部では8か月ほど要する場合もありますので、焦らず余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。

具体的には、売買契約後の引き渡しまでには、1.5か月から3か月が一般的な期間です。ただし書類の準備や住宅ローン審査の有無、抵当権抹消手続きなどにより、場合によってはさらに延びることもあるため、慎重な計画が求められます。

事前に余裕を持って準備をすることで、以下のようなミスや後悔を防ぐことができます:

準備項目注意点
必要書類の揃え登記識別情報や測量図などが不足すると手続きが滞る
引っ越し手配引き渡し日直前では料金が高くなったり業者が確保しづらい
ローン審査対応買主の住宅ローン審査に時間がかかると引き渡しが遅れる

上記のように、見えない工程にも配慮しながら、計画的に進めることで余裕をもって対応でき、後悔のない売却につながります。

相場把握と価格設定の注意点

不動産の売却を成功させるためには、不動産会社の査定額だけに頼らず、ご自身でも市場の相場をきちんと把握することが大切です。まずは、過去に似た条件で実際に売却された「成約価格」を、国土交通省が運営する「土地総合情報システム」や、不動産流通機構が提供する「レインズ・マーケット・インフォメーション」などで調べて、信頼性の高い参考資料としてください。これにより、査定額がおおむね妥当かどうかをご自身で判断できるようになります。

次に、売り出し価格を設定するにあたり、相場より高すぎると買い手がつきにくく、安すぎると損をするリスクがあります。インターネット上のポータルサイトで現在の売り出し価格を参考にするのも有効ですが、あくまで「売り手の希望価格」であり、最終的な「成約価格」とは乖離するケースも多いため、慎重な価格設定が必要です。

さらに、売却の時期やマーケットの動向を踏まえた戦略も重要です。とくに、引っ越しや異動などのタイミングが重なる1月から3月の需要期は、相場より少し高めの価格でも買い手がつきやすい傾向にあります。こうした季節的な事情を踏まえて、価格を調整することも一つの工夫といえます。信頼できる相場情報を元に、ご自身の状況に合った価格戦略を検討してください。

項目内容注意点
成約価格の確認土地総合情報システム・レインズで過去の取引価格を調査ご自身の物件と条件が近い事例を選ぶこと
売り出し価格の相場把握ポータルサイトの売り出し価格を参照希望価格である点に留意し、成約価格との差を考慮
時期に応じた価格戦略1~3月など需要期の価格設定を検討急ぎすぎず計画的に売却準備を進めること

費用・税金などお金に関する注意点

不動産を売りたいとお考えの方にとって、売却には多様な費用や税金が関わり、お金の見通しを立てておくことが大切です。まず、売主に必要な主な費用として、仲介手数料・印紙税・登記費用・測量費(該当する場合)などがかかります。仲介手数料は宅地建物取引業法で上限が定められており、売却価格に応じて計算されます。また、売却時の契約書には印紙税が必要ですし、登記簿の所有者変更には登記費用がかかります。さらに、境界が不明な場合や分筆が必要なケースでは、測量費用も発生します。

「高く売りたい」と「早く売りたい」という希望は、しばしば相反します。売出価格を高めに設定すれば売れにくくなり、結果として売却に時間を要し、相場が下がるリスクがあります。一方、早く売却したい場合は値下げを検討せざるを得なく、思った以上に手取りが減ることもあります。このバランスを見極めることが大変重要です。

また、売却益(譲渡所得)が発生した場合、譲渡所得税や住民税がかかります。ただし、居住用財産を売却する際は「三千万円の特別控除」が利用でき、譲渡所得が三千万円以下であれば課税されないことも多いです。さらに、所有期間が五年を超える長期譲渡所得の場合、税率が低くなり、十年を超えるとさらに優遇される「軽減税率」が適用されるケースもあります。これらの控除や軽減制度を適切に利用するには、売却した翌年に確定申告が必要です。

費用・税金の項目内容の概要注意点
仲介手数料・印紙税・登記費用・測量費売却に直接関連する諸費用費用がかさむ可能性に備えること
高く売る vs 早く売る価格と売却速度のバランス価格設定で手取りに差
譲渡所得税・三千万円控除・軽減税率税金軽減のための制度活用翌年の確定申告が必要

このように、不動産売却での費用構造と税制度を正しく理解し、売主としての資金計画を立てることが極めて重要です。

伝えるべき事項と契約時の注意点

不動産を売却する際には、物件の不具合や心理的瑕疵(事故や近隣トラブルなど)を売主の知る限り正直に、かつ契約書や重要事項説明書に明記することが不可欠です。これにより、売却後に契約不適合責任(旧「瑕疵担保責任」)を問われるリスクを軽減できます。特に雨漏り、シロアリの被害、構造的な欠陥などはインスペクション結果と併せて開示し、買主の信頼を得ることが重要です。

売買契約書には、物件固有の事情を反映する「特約条項」と、買主が了承する内容を明示する「容認事項」を記載することが望ましいです。たとえば、将来の測量結果が公簿面積と異なる可能性や、引渡し後の修繕対応など、売主・買主双方の合意事項を明文化することで、認識のずれから生じるトラブルを防止できます。

また、契約時のやりとりは口頭だけでなく、必ず書面やメールで記録しておくことが、安全な取引の基本です。後日、内容の食い違いや認識の相違が起きた際に、記録が証拠となりトラブル回避に大きな効果を発揮します。

注意点内容目的
不具合・心理的瑕疵の告知 雨漏り・シロアリ・事故歴などを正直に開示 契約不適合責任の回避と信頼の確保
特約条項・容認事項の記載 測量結果や設備状態など個別事情の明文化 認識ずれによるトラブル防止
記録を残す方法 書面やメールで契約内容ややりとりを記録 後日の証拠としてトラブルを防ぐ

まとめ

不動産の売却は人生の中でも大きな決断となるため、十分な準備と情報収集が欠かせません。スケジュールには余裕を持ち、相場や価格設定についても冷静な判断が求められます。費用や税金面の知識を身につけトラブルを防ぐためにも、契約時にはすべての情報を正直に伝え、書面に記録を残すことが大切です。初めての方も一つひとつ着実に進めれば、安心して不動産売却を検討できます。

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